老犬が夜中に吠え続ける「夜泣き」に耐えられないと悩む飼い主さんは少なくありません。
急に始まった夜泣きに戸惑ったり、ご近所に迷惑をかけているのではないかと心配したりすることもあるでしょう。
夜泣きには、認知症や空腹、病気、精神的な不安など、加齢に伴う様々な原因が考えられます。
この記事では、老犬の夜泣きの主な原因と、それぞれに合った対処法を分かりやすく解説。サプリや薬の活用、よくある疑問にもお答えします。
老犬の夜泣きに困っている方は、ぜひ参考にしてください。
老犬の夜泣きとは
老犬の夜泣きが増えてきた、突然始まった――そんな変化に戸惑っている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬は11〜15歳頃(早ければ7〜8歳頃)から、認知症の症状が出やすくなり、夜泣きや徘徊、昼夜逆転といった行動が見られることがあります。
実際、「夜通し鳴いて眠れない」「壁に向かって吠える姿に驚いた」など、不安を感じる声は少なくありません。
犬は小・中型犬で7歳、大型犬では5歳頃からシニア期に入り、年齢とともに身体や脳の機能が徐々に衰えていきます。
今までできていたことが上手くできなくなり、飼い主さんの手を借りる場面も少しずつ増えていくものです。
そんなとき、愛犬の夜泣きは「助けてほしい」と飼い主さんへ伝えるためのサインかもしれません。
叱るのではなく、まずは何を訴えているのかを探りながら、やさしく寄り添ってあげましょう。
老犬が夜泣きをする原因
老犬の夜泣きの原因は主に4つあるとされています。
ここでは、それぞれについて詳しく解説していきます。
認知症
老犬の夜泣きで多い原因のひとつが、認知症です。
犬も高齢になると「認知機能不全症候群」と呼ばれる症状が出ることがあり、たとえば昼夜逆転、同じ場所をぐるぐる歩き回る、飼い主さんを認識できないといった行動が見られます。
昼間はよく寝て、夜になると起きて鳴き続けるというケースも少なくありません。
そして、名前を呼んでも反応がない、後ろに下がれない、突然家の中を徘徊するなどの様子があれば、認知症の可能性があります。
ただし、認知症であるかどうかは飼い主さんでは判断することはできません。
もし何らかの症状がある場合は、動物病院へ行ってみるとよいでしょう。
空腹・喉の渇き
老犬が夜泣きをする原因のひとつに、空腹や喉の渇きがあります。
年を重ねると一度に食べられる量が減ったり、食事の体勢がつらくて途中でやめてしまうこともあり、夜中にお腹が空いて鳴いてしまうことがあります。
また、体力や体調の変化により、自分で水を飲みに行けなくなっていることもあります。
実際に夜泣きが、おやつや水を与えることで落ち着く場合は、空腹や喉の渇きが原因である可能性が高いでしょう。
日中の食事量や水分摂取の様子を、こまめに見てあげることが大切です。
病気や身体の不調の訴え
年齢とともに関節や内臓に不調が出やすくなり、痛みを感じて鳴くケースも少なくありません。
たとえば、飼い主さんが近づくと鳴き止むのに、触ろうとすると嫌がる場合は、身体のどこかに痛みがある可能性があります。
実際に、日本大学生物資源科学部 獣医学科・枝村一弥先生の調べによると、関節の病気以外で受診した10歳以上の犬524頭のうち、約半数に関節の問題が見つかり、そのまた半数の飼い主さんは関節炎に気づいていなかったという結果がでています。
変形性関節症や椎間板ヘルニアなど、痛みを伴う病気は多くあります。
愛犬は痛みや苦しみを言葉で伝えることはできません。
そのため、夜泣きという形で不調を伝えている可能性もあるのです。
参考:https://www2.zoetis.jp/dog-pain/oapain
精神的な不安の訴え
老犬になると視力や聴力が衰え、思うように身体も動かせなくなってきます。
そうした変化から不安やストレスを感じ、「そばにいてほしい」「助けてほしい」と夜泣きをしていることも多いです。
例えば、寝たきりになった愛犬が毎晩のように鳴き続け、最初は認知症を疑ったものの、実際には「身体の向きを変えてほしい」「ひとりにしないでほしい」といった不安や甘えから鳴いていた、という実例もありました。
また、飼い主さんと離れて眠ることに強い不安を感じて鳴いてしまう犬もいます。
犬の不安行動に関しては、フィンランドで実施された13,000頭以上の調査でも、72.5%の犬に何らかの問題行動が見られ、分離不安は14〜20%の犬に発生していたという結果が報告されています。
このように、不安からくる行動は珍しくなく、老犬の夜泣きもその一つと考えられます。
加齢によって感じやすくなる不安や孤独が、夜になるとより強く現れてしまうのです。
参考:https://www.nature.com/articles/s41598-020-59837-z
老犬の夜泣きへの対処法
老犬の夜泣きの原因がわかったところで、ここからはそれぞれの対処法を紹介します。
愛犬と穏やかな時間を過ごせるよう、一つひとつ確認していきましょう。
認知症への対処法
認知症による夜泣きが疑われる場合は、まず獣医師に相談しましょう。
必要に応じて、認知症の進行を抑える内服薬や睡眠薬が処方されることがあります。
また、脳の働きをサポートする成分を含んだフードに切り替えることも、症状の緩和につながります。
加えて、日中の過ごし方を見直すことも大切です。
日光を浴びながらの散歩や軽い運動には、安眠を助ける「セロトニン」の分泌を促す働きがあります。
このセロトニンは、夜に分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の材料にもなり、昼間の刺激が質の良い眠りをサポートしてくれます。
動けない犬であっても、やさしいマッサージや身体の向きを変えるといった小さな刺激が効果的です。
反対に夜は静かで暗い環境を整えて、落ち着いて過ごせるようにしてあげましょう。
病気や身体の不調への対処法
関節痛や床ずれなど、身体の痛みが原因で夜泣きしている場合は、まずかかりつけの獣医師に相談しましょう。
状態に応じて、痛み止めの処方や関節をサポートするサプリメント、床ずれ防止の寝具やサポーターの活用など、適切なケアが提案されます。
体圧を分散するマットを使ったり、時間を決めて身体の向きを変えてあげることで、眠りの質を改善できます。
また、寝る場所はできるだけ静かで薄暗い環境に整えて、安心して眠れるようにしてあげましょう。
介護の対応は家族で統一しておくと、犬にとっても混乱が少なく、より落ち着いた生活につながります。
精神面への対処法
老犬は、視力や聴力の衰え、思うように動けないもどかしさなどから、若い頃よりも不安を感じやすくなります。そんな不安や寂しさが夜泣きという形で現れることも少なくありません。
まずは飼い主さんの存在を感じられるよう環境を整えてあげることが大切です。
寝床の位置を飼い主さんのそばに移したり、夜間に同じ部屋で過ごすだけでも、愛犬が安心しやすくなります。
近くにいることで、夜間の排泄や痛みのサインにもすぐ気づけるため、夜泣きの予防にもつながります。
また、照明をうっすらと点けておく、飼い主さんのにおいがついた毛布を置くなど、感覚を頼りに安心できる工夫も有効です。
不安が強く、夜泣きが続いてつらい場合は、獣医師やドッグトレーナーに相談してみましょう。
行動療法や必要に応じた薬の使用など、症状に合わせた対処法が提案されることもあります。
老犬の夜泣きに関するよくある質問
ここでは、老犬の夜泣きについて、よく寄せられる質問をまとめました。
ぜひ参考にして、悩みを一つでも減らしていきましょう。
犬の夜泣きに関するサプリはある?
老犬の夜泣きに悩んでいる場合は、脳の健康をサポートする脳ケアサプリメントを取り入れる方法があります。
先述した通り、老犬の夜泣きは、脳の機能低下や認知症の初期症状の一つとして現れているかもしれません。
こうした状態は、脳に必要な栄養が不足したり、活性酸素によって脳細胞が傷つくことが原因の一つとされています。
そのため、ポリフェノール(アントシアニン、グネチンC)やカロテノイド(アスタキサンチン、ルテイン)、DHA、ビタミン類(A・C・E)など、脳の健康維持に役立つ成分を含むサプリメントを取り入れてみましょう。
また近年は、「バングレン(特定の植物由来成分)」のように神経栄養因子に似た働きを持つ成分も注目されており、神経細胞の維持や新生を助ける可能性があると言われています。
老犬になると食が細くなりがちで、食事だけでは十分な栄養を摂りにくいこともあるため、サプリメントを上手に活用するのはおすすめな方法です。
動物病院で取り扱っている製品なら、より安心して与えることができます。
犬の夜泣きは改善できる?
完全に泣き止むとは限りませんが、原因に合った対処をすれば、夜泣きを軽減できる可能性は十分にあります。
認知症や痛み、不安、空腹など原因はさまざまです。
まずは、獣医師に相談して原因を特定することが大切です。
環境を整えたり、薬やサプリメントを活用したりと、できることはたくさんあります。
焦らず、少しずつ試していきましょう。
薬を使う際の注意点は?
老犬の夜泣きに薬が使われることもありますが、以下の3点に注意が必要です。
① 自己判断で使わない
市販薬や通販の薬を独断で与えるのは危険です。
必ず動物病院で診察を受けましょう。
② 指示を守って使う
老犬の夜泣きの処方薬は最少の用量から始めるのが一般的です。
使用するタイミングや量は細かく指示されるため、きちんと守って正しく与えましょう。
③ 異変があればすぐ相談
薬には体質によって合う合わないがあります。特に老犬の場合、副作用が出やすくなると言われています。
少しでも様子がおかしければ服用を中止し、獣医師に相談してください。
犬の夜泣きは死期が近いって本当?
「夜泣きが続くと、もしかして最期が近いのでは…」と不安になる方も多いでしょう。
けれど、老犬の夜泣きの多くは加齢による不安や認知機能の低下、体調の変化などが原因で、すぐに死期が迫っているとは限りません。
気になる場合は、早めに獣医師に相談してみてください。必要なケアで落ち着くケースも多くあります。
夜間の排泄はどう対処すればいい?
夜間の排泄対策としては、まずオムツの使用や就寝前の排泄を徹底するのが基本です。
自力で出しにくい場合は、お尻をやさしく刺激して排便を促すとスムーズにいくこともあります。
また、尿が漏れやすい子には、お腹をそっと押して排尿を手伝ってあげるのもひとつの方法です。
さらに、夜間だけでもオムツを使用することで、飼い主さんの介助負担が軽くなります。
いずれの場合も、愛犬が不快にならないよう、様子を見ながら無理のない範囲で対応してあげましょう。
まとめ
老犬の夜泣きは、単なるわがままではなく、身体の不調や不安を伝えるサインかもしれません。
認知症や空腹、痛みなど、原因を一つずつ探って対策していくことが大切です。
サプリの活用や環境の見直しで改善する場合もありますが、つらさが続くときは無理せず、獣医師に相談してみましょう。
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