ペット保険は不要と考える人がいるのは、掛け捨てになることだけでなく月々の支払いを重荷に感じるからでしょう。
突然起こってしまった事故や病気で治療費が高額になった場合、補償範囲が狭いと経済的に苦しくなることもあります。貯蓄で対応できると考えていてもペットの症状の急激な変化により予想外の出費に備えられない可能性もあります。
そこで今回はペット保険に関する疑問をはじめ、おすすめの選択肢について解説していきます。
『ペット保険はいらない』と言われる理由

ペットの健康のため、ペット保険を考える飼い主が多いのも事実です。しかし「ペット保険はいらない」と思う人もいます。
その理由として掛け捨てである保険料、補償範囲の狭さ、年齢が上がると保険料も高くなる、手続きが面倒などが挙げられます。
ここではペット保険に入るのをためらう理由を分かりやすく説明しましょう。
保険料が掛け捨てだから
多くのペット保険は掛け捨て型なので契約期間中に病気やケガで保険を使わなければ、支払った保険料は戻ってきません。
毎月の保険料はだいたい3,000円から8,000円くらいですが、10年以上入ると数十万円になることもあります。そうなると「元気なうちはお金が無駄になる気がする」と感じる飼い主さんもいますよね。
それに人間の生命保険と違って貯蓄性がないため、満期になってもお金は戻ってきません。こういった掛け捨ての仕組みが「もしもの時のために払うのはもったいない」という気持ちに繋がりやすく加入をためらう理由の一つになっていると考えられます。
補償範囲に制限が多い場合があるから
ペット保険でカバーされるのは、主に病気やケガの治療費です。
しかしワクチン、健康診断、フィラリア予防、避妊・去勢手術といった普段のケアは多くの保険では対象外のことがほとんどです。
さらに持病がある、過去に病気をしたことがあったペットでは保険に入れないかカバーされる範囲が狭まることもあります。年を取るほどこの傾向が強くなるため、保険に入っても使える場面が少ないといったことも多いのが現実です。
さらに特定の犬種がかかりやすい病気が対象外になっている場合もあるため、いざという時に思ったほどカバーされず、加入をためらう飼い主さんも少なくありません。
高齢になると保険料が高くなるから
ペットも年を取ると病気になりやすくなることからペット保険の料金は毎年上がる傾向にあります。
特に10歳を過ぎると保険料がかなり上がることもよくあります。若い頃は月3,000円くらいだった保険が年を取ると月1万円を超えることもあるのです。
シニア向けの保険プランを用意している会社もありますが、多くの場合は年齢が上がるごとに保険料も上がります。それに年を取ると新規で保険に入るのも難しくなり、病気が見つかってからでは加入できないこともあります。
こういった理由から長い目で見ると保険料の負担が大きくなるため、「ペット保険はいらない」と言われることがあるようです。
手続きが面倒で利用しにくいこともあるから
ペット保険を使う時、多くの方は動物病院で発行される診療明細書や領収書を保険会社に提出して保険金の請求をすると思います。
ただ、実際にやってみると、これが面倒なケースも多いのが現実です。病院によって書類の形式がバラバラだったり記載する内容がすごく細かかったり。思ったよりも時間がかかってしまうことが少なくありません。
それに郵送で送ったり、ネットで申請したりする方法を覚えなくてはいけないのも普段からこういう手続きに慣れていない飼い主さんにとっては、やや大変かもしれません。
特に初めて保険を使う時は、「申請って難しそう…」「もし書き間違えたら、保険金がもらえないんじゃないか…」と不安になる人もいるでしょう。
こういった手続きのわずらわしさや記載などの作業に時間がかかる点がペット保険に入るのをためらう理由の一つになっているのは間違いありません。
ペット保険に入らないリスク・デメリット

ペット保険に入らないという選択肢もありますが、それにはいくつか注意すべき点があります。
例えば急な医療費がかさんだり、何か問題が起きた時の賠償責任、そして治療費を全て自分で払うことによる精神的な負担などが考えられます。ここではペット保険に入らなかった場合に起こりうる主なリスクについて説明します。
高額医療費のリスク
ペット保険に入っていないと病気やケガの治療費は全部自分で払うことになります。例えば犬の椎間板ヘルニアの手術だと30万~50万円、がんの治療だと100万円以上かかることもよくあります。
それに糖尿病や心臓病のような長引く病気だと毎月の通院費や薬代が数万円になることも珍しくありません。こういった高い医療費を急に払うのは、家計にとって大きな負担になるのも事実です。
加えてペットの医療には人間のような健康保険がないので、治療費は全部飼い主さんが払うしかないのです。長い目で見るとペット保険に入っておいた方が結局お金がかからないこともあります。
対人・対物賠償の自己負担発生
ペット保険に入っていないと、もしペットが他人や他の動物にケガをさせたり、物を壊したりした場合、飼い主が自分で全額を払うことになります。
例えば散歩中に誰かを噛んでケガをさせてしまったり、他の犬とケンカして治療費がかかったりした場合です。こういったトラブルでは賠償金が数十万円から数百万円になることもあり、予想外の出費になる可能性があります。
ペットがお店の商品を壊したり、民家に侵入して物を傷つけたりするようなケースもあります。
このような場合賠償責任保険がついたペット保険に入っていれば負担を軽くできますが、入っていない場合は全て自分で払うことになります。お金の面でも精神面でも大きな負担になるかもしれません。
心理的負担のリスク
ペット保険に入っていないと、お金の面だけでなく、気持ちの面でも負担が大きくなりがちです。
治療費が気になるせいで「少し調子が悪そうだけど、もう少し様子を見ようかな」「検査費用が高いから、また今度でいいか」と判断を迷ってしまうことがよくあります。しかし、そのせいで病気の発見が遅れて症状が悪化してしまうことも。
「もっと早く病院に連れて行ってあげればよかった…」と後悔する飼い主さんも少なくありません。ペット保険に入っていれば治療費の心配をせずに一番良い治療を選べますが、入っていないと、いつもお金のことが頭から離れないでしょう。
こういった心の負担や罪悪感は飼い主さんにとっても大きなストレスになり、ペットの健康にも良くない影響を与える可能性があります。
ペット保険に入りたくない飼い主さん向けの代替案

ペット保険に入らなくても備える方法はあります。
例えば医療費として貯金したり、日頃からペットの健康に気をつけたり、自治体や団体のサポート制度を利用したりできます。そうすることで保険だけに頼らず自分でしっかり準備しておけば、万が一の時も慌てずに対応できるでしょう。
ここでは、ペット保険を使わない場合の具体的な対策についてお話します。
定期的な貯蓄や自己資金の準備
ペット保険の保険料を貯金に回してペットの医療費を積み立てるというのは、保険の代わりによく検討される手段です。
具体的に見ていきましょう。毎月5,000円を10年間積み立てたとすると、単純計算で約60万円になります。この金額があればペットが急に手術が必要になったり、長期的な治療が必要になったりした場合にも対応できる可能性があります。
貯蓄の大きなメリットは保険と違って掛け捨てにならないことです。もしペットが病気にならず、貯めたお金を使わなかったとしても、そのお金はそのまま飼い主さんの資産として残ります。元気なまま年を取った場合は老後の介護費用に充てることもできます。これはかなり大きいメリットと言えるでしょう。
もちろん貯蓄で備えるというのは、誰にでも最適な方法ではありません。ご自身の状況に合わせて、じっくり検討することが重要です。
健康管理と予防ケアの徹底
ペットの健康を維持するために一番大切なのは毎日の生活の中で病気やケガを予防することです。例えば定期的な健康チェックやワクチン接種、寄生虫対策、そして歯のケアをきちんと行うことで、結果的に医療費を抑えることにつながります。
食事も大切です。バランスの取れた食事を与えることや適切な量の運動をさせること、さらにペットがリラックスできる環境を整えることも健康を保つ上でとても大切です。若い頃からこういった予防を心がけることで、年を取ってからの病気を減らすことができると言われています。
日々のケアをしっかり行うことは結果的に高額な医療費を払うリスクを減らし、ペット保険だけに頼るのではなく、もっと安心してペットと暮らすための良い方法です。
他の医療費支援制度の活用
国や自治体、動物福祉団体が提供する支援制度を上手に活用するのも一つの方法です。
例えば狂犬病や感染症のワクチン接種費用を補助する制度が一部の自治体にはあります。また、災害時にペットを守るための緊急医療支援のほかに治療費を一時的に立て替える貸付制度がある地域も珍しくありません。
加えて、動物愛護団体やNPOの中には、収入が少ない家庭向けに愛犬の医療費を補助するプログラムを実施しているところもあります。
これらの制度を前もって調べて必要に応じて利用することで、わざわざペット保険に入らなくてもお金の面で安心できる場合があります。情報収集と早めの準備が賢い愛犬のリスク管理につながるでしょう。
ペット保険で得られるメリットや補償内容

ペット保険は医療費のサポートだけでなく、飼い主さんの心の支えにもなってくれます。
治療費の不安を減らすのはもちろんシニアになった時の医療費への備えや病院での支払いがスムーズになるサービスも増えてきているため、とても便利です。
ここでは、ペット保険でどんな保障やサポートが受けられるのか主なものを紹介します。
治療費負担の軽減になる
ペット保険の一番のメリットは、医療費を一部負担してくれることでしょう。およそ50%から90%くらいの割合で補償してくれます。例えば70%補償のプランなら、10万円の治療費がかかった場合、保険で7万円がカバーされ自分で払うのは3万円で済みます。
また手術や入院、それに長期間の通院が必要になったときでもお金の心配が少なくなるのは本当にメリットといえます。
補償内容は通院・入院・手術で分かれており、それぞれ上限額や日数制限があるものの、年間で100万円以上補償してくれるプランもみられます。もしもの時に高額な治療が必要になった場合でも「お金のことより治療を優先できる」という安心感が得られるのがペット保険のメリットです。
高齢期に向けた医療費への備えになる
ペットも年を取ると関節が悪くなったり、腫瘍ができたり、内臓が悪くなったりと長い間治療が必要になることが増えます。
どうしても医療費は若い頃よりかかってしまいますが、ペット保険に入っていれば、その負担をかなり減らせます。最近は、12歳以上の年を取ったペットでも続けられるプランや保険料が変わらないものも出てきました。
それにがんや椎間板ヘルニア、白内障といった高齢のペットに多い病気にも対応できる保険が増えてきて、安心して長く面倒を見られるのが良いところです。
ペット保険があれば、年を取ったペットを経済的にも精神的にも安心して支えられます
便利なサービスの利用が可能になる
近年、多くのペット保険会社が「窓口精算サービス」を始めています。
これは動物病院で支払う時に保険会社が直接病院にお金を払うシステムです。飼い主がいったん医療費を立て替える必要がないので、費用の高い治療でもすぐに受けられ、お金の心配や請求の手間が減ります。それに加えて、ネットで簡単に保険金を請求できるアプリや書類がいらないデジタル請求サービスも増えています。
それから24時間対応の獣医さんへの電話相談や予防接種や健康診断のお知らせ機能がついたアプリなどペットの健康管理をサポートするサービスも充実しています。
こういったシステムのおかげでペット保険は「もしもの時の備え」としてはもちろん、普段から安心で便利なものになっています。
ペット保険選びのポイントと賢い加入時期

ペットの医療費は症状の変化によって急に高くなることも珍しくありません。そんな時、家計の強い味方になるのがペット保険です。
ここでは保険選びで失敗しないコツや、いつ入るのが一番良いのか、わかりやすく説明します。
保険料・補償範囲・免責金額を比較
ペット保険を選ぶ上で重要なのは、何を一番重視するかをはっきりさせることです。特に保険料・補償範囲・免責金額の3つをチェックしましょう。
まず保険料は毎月かかる固定費なので家計との兼ね合いは必須です。次に補償範囲は通院、入院、手術のどこまでカバーされるかで内容が大きく変わります。
また、免責金額は自分で負担する金額のことです。免責金額が高いほど保険料は安くなるため重要なポイントです。
例えば、よく病院に行くペットなら補償範囲を広く、あまり病院に行かない元気なペットなら免責金額を高めに設定して保険料を抑えるという選び方があります。ペットの性格や体質、年齢などを考慮して自分に合ったバランスを見つけるのが、後悔しないための秘訣です。
ペットの年齢・健康状態に合わせた保険を
ペット保険を選ぶ際は、年齢や健康状態を考慮することが重要です。
若い頃は保険料が安く、充実した補償のプランを選びやすいですが、年齢が上がると保険料が高くなり補償内容が限られることもあります。特にシニア期に入ると病気を持っている場合は、保険に加入すること自体が難しくなるかもしれません。そのため健康なうちに加入しておくのがおすすめです。
またケガをしやすい犬種や遺伝的に病気になりやすい猫種は補償範囲が広い保険を選ぶと良いでしょう。ペットの体調や年齢をきちんと把握し、将来の医療費のリスクを考えて保険を選ぶことで、万が一の時に安心して対応できます。
加入するべきタイミング
ペット保険は、できるだけ早く入るのがおすすめです。特に子犬や子猫の時期は健康状態が安定していて、保険料も比較的安く設定されています。この時期に加入しておけば将来、病気になったときの備えになります。
反対に高齢になってからだと、加入が難しかったり、保険料が高くなったりすることがあります。すでに病気を持っている場合は新しい保険に入れないこともあります。
そのため遅くても2〜3歳までには加入しておくと良いでしょう。ペットが安心して一生を過ごせるように早めに準備しておくことが大切です。
ペット保険に関するよくある質問

ペット保険は、もしもの時の医療費を考えると入っておいたほうが安心です。しかし、いざ入ろうとすると、「どの保険がいいんだろう?」「年齢で入れないことってあるの?」といったようにいろいろ疑問が出てくるはずです。
ここでは飼い主さんがよく持つ質問にわかりやすく答えていきます。
ペット保険の相場はいくらですか?
ペット保険の料金はペットの種類、年齢、体の大きさ、それにどのような保障にするかで大きく変わります。
例えば犬なら0歳の小さい犬だと月々だいたい930円から2,480円くらい、5歳だと990円から3,340円くらいがよくある値段です。8歳を過ぎると1,350円から4,880円くらいになることがほとんどです。
また体の大きい犬ほど保険料は高く、年を取ると月々の料金も上がります。1年で考えると、小さい犬の0歳だと大体1万円から3万円台、年を取った犬だと5万円を超えることもあります。
ペット保険の加入に年齢制限はありますか?
ペット保険は大体、入れる年齢に上限があります。通常は生まれたばかりのペットから入れますが、およそ8歳くらいになると新規で入れなくなることが多くみられます。
年を取ると入れる保険が少なくなったり、保障される範囲が狭くなったりします。それに高齢になってからだと以前に病気をしたことがある場合、入れないこともあります。
そのためできるだけ若いうちに入っておくのが大事です。早く入っておけば、保険料も安く済むことが多いですし、長い目で見て安心です。
複数のペットを同時に保険に加入することはできますか?
同時加入、つまり多頭飼いでもペット保険は複数同時に加入できます。
保険会社によっては多頭割引があり、2匹目から保険料が少し安くなることもあります。ただ複数加入する場合は、一番年上のペットの年齢制限に合わせる必要がある場合があるので注意してください。また、割引率は条件は会社によって違うので、加入する前に「何匹から割引になるか」「補償内容は同じか」を比べて確認するのが大事です。
家族みんなが安心して入れるように各社の多頭割引をうまく活用しましょう。
保険が使えないケースにはどんなものがありますか?
ペット保険には、保険が適用されないケースがあります。例えば加入前からあった病気や長引く病気、予防のための診療(ワクチンや健康診断)、繁殖や妊娠に関わる治療、わざと怪我をさせた場合などです。
また保険会社によっては、特定の病気(歯周病や皮膚病など)が対象外となることもあります。これらの条件は保険の契約書に書かれているため、契約する前に確認しましょう。
どのような治療が保険でカバーされるのかを把握しておくことが後々のトラブルを防ぐために大切です。
解約時の注意点について教えてください。
ペット保険を途中で解約場合、基本的に返戻金は出ません。特に月払いの場合は解約する月の保険料は丸々請求されることがほとんどです。一方年払いの場合は保険会社によっては払いすぎていた分が戻ってくることもあります。
ただし返戻金があるかどうか、いくら戻るか、どう手続きするかは契約内容によって違います。それに一度解約すると、もう一度入りたくても難しい場合があるので、よく考えてから決めましょう。
解約する前に契約書や保険会社の窓口で詳しく確認して納得してから手続きすることが大切です。
まとめ

ペット保険は単なる出費ではなく、家族の一員である愛犬のために将来への備えとなるものです。予期せぬ病気やケガで治療費がかさんでも保険に入っていれば費用の心配をせずに愛犬にとって最適な治療を受けさせられます。
元気なうちに将来起こりうるけがや病気といった事態に備えて考えてみましょう。愛犬が病気になってしまってから後悔しないためにも今のうちに愛犬に合ったペット保険の検討をおすすめします。


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