寝たきりの時間が増えてくると、気になるのが老犬の「床ずれ(褥瘡)」。
愛犬は声に出せませんが、実はとてもつらいんです。
「どうしたら防げる?」「もしできてしまったらどうすれば?」と心配になりますよね。
重症化すると細菌が入り込んで、命に関わるリスクも出てきます。
ですが、飼い主さんのちょっとした工夫や心がけ次第で、しっかり予防することができます。
この記事では、床ずれの予防法ややさしい治し方をわかりやすくご紹介します。
愛犬が少しでも快適に過ごせるよう、ぜひ参考にしてください。
老犬の床ずれ(褥瘡)とは?原因とできやすい場所
床ずれ(褥瘡〈じょくそう〉)とは、長く同じ姿勢で寝ていることで、身体の一部がずっと圧迫され、血の流れが悪くなってしまい、皮膚やその下の組織が傷んでしまう状態のことです。
まるで、水の流れが止まった場所で草が枯れていくように、血が通わなくなった皮膚が少しずつ傷ついてしまいます。
「寝たきりの老犬だけがなるもの」と思われがちですが、実は若い犬でも、病気やケガで動けない状態が続けば起こる可能性があります。
人間にもできる床ずれですが、愛犬は声に出して「痛い」と伝えることができないため、気づいた時には悪化していることも少なくありません。
ここでは、床ずれができるしくみや、特に注意したい場所について、わかりやすく解説していきます。
床ずれ(褥瘡)ができるメカニズム
床ずれは、同じ姿勢で長時間寝ていることで、体の一部にずっと圧力がかかり、血の流れが悪くなることが原因で起こります。
血流が止まると、その部分に酸素や栄養が届かなくなり、皮膚や筋肉がダメージを受けてしまうのです。
特に骨が出っ張っている場所などは圧力がかかりやすく、皮膚や組織が傷みやすくなります。
そのままにしておくと、皮膚が赤くなるだけでなく、だんだんとただれたり、ひどい場合には穴が開いてしまうこともあります。
床ずれ(褥瘡)ができやすい部位
床ずれは、体の中でも「骨が出っ張っていて、寝たときに床と接する場所」にできやすいのが特徴です。
年齢を重ねて痩せてくると、筋肉や脂肪が減って骨が目立つようになります。
すると、骨の出っ張り部分に体の重みが集中し、皮膚が強く押されることで血の流れが悪くなってしまうのです。
特に注意したいのは次のような部位です。
- ほお(頬骨まわり)
- 肩や肩甲骨のあたり
- 腰やおしり
- 前足の手首(手根)
- 後ろ足の足首(飛節)
このような場所は、長時間同じ姿勢で寝ていると圧迫されやすく、床ずれができやすいので、日頃からこまめに体勢を変えてあげることが大切です。
老犬の床ずれ(褥瘡)を防止するための対策
大切な愛犬が痛がっている姿は、飼い主にとってもつらいものです。
床ずれは1度できてしまうと完治するのに時間がかかりますし、再発しやすいとも言われています。
だからこそ、できるだけ早く予防してあげることが大切です。
ここでは、老犬の床ずれを防ぐために、飼い主さんが日常の中でできる対策をご紹介します。
こまめな体位変換
長時間同じ姿勢で寝ていると、同じ場所に圧力がかかり続けてしまいます。
2〜3時間おきに寝返りをさせてあげることで、皮膚や筋肉への負担を減らすことができます。
ただし、無理に脚だけを引っ張るような寝返りは避けましょう。
内臓に負担がかかってしまうため、必ず一度抱き上げてから向きを変えてあげましょう。
【上手な寝返りのさせ方】
- 犬の背中側に回り、片手を肩の下に差し入れて、ゆっくりと上体を起こす
- もう片方の手で後ろ脚を支えながら、お腹側が下になるように体をくるっと回す
- マットの上にお尻からそっと下ろし、反対向きに寝かせる
犬の身体をしっかり支えながら、ゆっくり優しく動かしてあげるのがポイントです。
体圧分散マットの活用
寝たきりの愛犬には、体への負担を減らすためのマット選びも大切です。
市販の体圧分散マットや、ジェル素材・ビーズ入りの柔らかいクッションタイプのマットを使うと、体の一部だけに圧が集中するのを防ぐことができます。
皮膚を清潔に保つ
皮膚を清潔に保つことも、床ずれ予防の大切なポイント。
とくにお尻まわりは排泄物で汚れやすいため、毛を短く刈っておくとお手入れがしやすくなります。
しっぽを包帯で巻いておくのも、衛生的に過ごす工夫のひとつです。
身体全体も、蒸しタオルで優しく拭いてあげたり、水のいらないシャンプーでケアしたりするなど、負担の少ない方法で清潔を保ってあげましょう。
栄養管理とマッサージ
床ずれを防ぐには、体の外側からのケアだけでなく、内側からのサポートもとても大切です。
まず意識したいのが、栄養バランスの取れた食事。
皮膚や筋肉の健康を保つには、良質なたんぱく質やビタミン、ミネラルが欠かせません。
特に傷の回復には、しっかりと栄養を摂ることが重要です。
食欲が落ちている場合は、獣医師に相談のうえ、栄養補助食品やフードを見直してみるのもよいでしょう。
さらに、定期的なマッサージも床ずれ予防にはとても効果的。
長く同じ姿勢でいると血流が滞りがちになるため、マッサージによって血液の流れを促し、皮膚や筋肉に酸素と栄養を届けることができます。
特に、肩・腰・足首など、床ずれのリスクが高い部分を中心に、優しくなでたり軽くもみほぐしたりするだけでもOK。
愛犬の様子を見ながら、負担にならない範囲でおこないましょう。
老犬に床ずれ(褥瘡)ができてしまった時の治し方と治療
老犬に床ずれができてしまったときは、できるだけ早く適切なケアをしてあげましょう。
ここでは、自宅でできる対処法や病院での治療について、わかりやすくご紹介します。
軽度の床ずれ:自宅でできるケアと応急処置
軽い床ずれが見つかったとき、「すぐに病院に行くべき?」と不安になる方も多いと思います。
もちろん、できるだけ早く動物病院で診てもらうのがベストです。
ですが、どうしてもすぐに連れて行けない場合は、自宅で応急処置する必要があります。
床ずれのケアで大切なのは、患部を清潔に保つことと乾燥させないことです。
おむつはこまめに交換し、汚れたらぬるま湯や蒸しタオルでやさしく拭き取りましょう。
傷のまわりの毛を短く整えておくと清潔を保ちやすくなりますが、ハサミの扱いには注意が必要です。
使い捨てのタオルやコットンなどがあると後片付けも楽になります。
また、傷口が乾くと治りが遅れるため、処方された軟膏を塗って保湿し、市販のパッドやガーゼで軽く覆ってあげましょう。
応急処置だけでも悪化を防ぐことはできますが、愛犬がつらい思いを長くしないためにも、できるだけ早めに獣医師に診てもらうようにしてください。
ひどい床ずれ:動物病院での治療法
病院では、愛犬の状態に合わせて、次のような流れで治療が行われます。
- 褥瘡まわりの毛を丁寧に刈る
→ 清潔を保ちやすくし、傷の観察もしやすくなります。 - 生理食塩水やぬるま湯でやさしく洗浄する
→ 傷口についた血液や分泌物を洗い流し、感染のリスクを減らします。 - 壊死した組織を取り除く(デブリードマン)
→ 回復を妨げる傷んだ組織を取り除くことで、治りを早めます。 - 状態に応じて軟膏や創傷被覆材を使用する
→ 傷口を保護しながら湿潤状態を保ち、皮膚の再生を促します。
傷の深さや広がりによっては、抗生物質を使ったり、点滴など全身的なサポートが必要になることもあります。
ひどく見える床ずれでも、適切な処置を受ければ少しずつ回復に向かっていきます。
「これはもう手遅れかも…」とあきらめずに、まずは獣医師に相談してみてください。
愛犬の痛みや不安を軽くする方法がきっと見つかるはずです。
治療期間と自宅での注意点
床ずれの治療期間は、傷の程度や体力の状態によって異なります。
軽度であれば数日〜1週間ほどで改善することもありますが、深くなっている場合は数週間〜数ヶ月かかることも。
治療後も、毎日のケアを続けていくことが回復への近道になります。
自宅でのケアでは、以下の3つに気をつけましょう。
- 患部の清潔を保つ
- 傷口を乾燥させない
- 獣医師の指示通りの処置をする
床ずれ部分が乾くと痛みが出たり、皮膚が剥がれやすくなり治りが遅れます。
獣医師に処方された軟膏を塗り、パッドやラップで保湿しましょう。
市販されているワセリンやオロナインなどを使用することもありますが、必ず事前に獣医師に確認してください。
老犬の床ずれ(褥瘡)に関するよくある質問
ここでは、老犬の床ずれに関するよくある質問にお答えします。
床ずれ(褥瘡)は自力で治せる?
基本的には、動物病院での治療が必要です。
軽度の初期症状であっても、放っておくと悪化してしまうことがあります。
進行すると皮膚の奥深くまでダメージが広がり、命に関わることも。
まずは獣医師に相談し、適切な治療を受け、自宅でケアするのが安心です。
犬の床ずれの初期症状は?
皮膚が赤くなる、薄くなる、かゆがる、痛がるといった変化が見られたら、床ずれのはじまりかもしれません。
初期には、水ぶくれのようなふくらみができることもあります。
それが破れると、ジュクジュクした傷になって悪化する可能性があります。
見た目の小さな変化も、早めに気づいてあげることが大切です。
床ずれが起きやすい犬種は?
特に注意が必要なのは、皮膚が薄く脂肪が少ない犬種です。
たとえばグレイハウンドのような体格の細い犬は、骨が床に当たりやすく床ずれを起こしやすいとされています。
どんな床ずれ(褥瘡)防止グッズがおすすめ?
床ずれを防ぐには、愛犬の状態に合ったグッズを選ぶことが大切です。
主に次の3タイプがあります。
- マットタイプ:寝たきりの愛犬におすすめ。身体全体をやさしく支え、床との接触圧を分散してくれるため、床ずれ予防の基本アイテムです。低反発やジェル素材など、快適さを重視したものが人気です。
- クッションタイプ:骨が出やすい肩やお尻、足の付け根などの部分に使うと効果的。やわらかい素材が局所の圧迫を軽減してくれます。
- サポータータイプ:後ろ足が不自由で前足だけで移動する愛犬などにおすすめ。肘を保護することで摩擦や打ち身を防ぎ、床ずれを起こしにくくします。
グッズを選ぶ際は、通気性の良い素材を選ぶことでムレを防げますし、洗濯できるものなら清潔を保ちやすく、お手入れも簡単です。
愛犬の体格や症状に合わせて、無理なく快適に使えるものを選んであげましょう。
まとめ
床ずれ(褥瘡)は、シニア期を迎えた愛犬にとってつらい症状のひとつですが、飼い主さんのやさしいケアで予防や改善ができます。
こまめな寝返り、体圧を分散するマットの使用、清潔を保つ工夫や、やさしいマッサージなど、日々の小さな気づかいがとても大切です。
すぐにすべてを完璧にする必要はありません。
できることから、少しずつ。
愛犬が心地よく、安心して過ごせる時間を積み重ねていくことが、なによりのケアになります。
これからの毎日が、あなたと愛犬にとって、穏やかであたたかいものでありますように。
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