老犬の下痢はなぜ起こる?主な原因と注意点を解説

下痢で体調が悪そうな老犬の画像 poop

飼い主であれば、愛犬には健康に長生きしてもらいたいという願いを持つことは当然です。

人間の何倍ものスピードで歳をとる愛犬たちは、気づけばあっという間にシニア期に入ります。加齢に伴い、下痢などのトラブルに直面する頻度は増えるでしょう。

若い頃は大きな問題にならなかった下痢でも、老犬では程度や経過によっては命に関わる危険性もあるため注意が必要です。

なぜ老犬は下痢を起こしやすくなるのでしょうか。そして、飼い主さんはどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。

老犬の下痢はなぜ起こる?主な原因と注意点

加齢による消化機能の低下

加齢とともに体内の様々な器官の機能が低下します。

例えば、消化器もその一つです。

具体的には、腸運動の変化や、胃・腸の消化吸収能力の低下などが挙げられます。

そのため、老犬用のドッグフードは消化吸収がしやすいように作られていたり、消化器の負担になりにくい原料が使用されているなどの工夫がされていることが一般的です。

若い頃は問題なく食べられたものでも、老犬になると消化器に負担をかけてしまうこともあります。

消化器への負担がきっかけで下痢につながる危険性もあるため注意しましょう。

食事の急な変更

消化機能が低下してくる老犬は、少しの変化にも消化器がびっくりしてしまい、負担になってしまうことがあります。

どんなに良質のドッグフードであっても、急な変更によって消化器に大きな負担をかける可能性が高いです。

切り替えを検討するときは、早い段階から少しずつ新しく切り替える予定のドッグフードを混ぜ込み、新しいドッグフードの割合を増やしていく方法で切り替えましょう。

老犬の場合、新しいフードの割合はより緩やかに増やしていく方が望ましいです。

ストレス

老犬になると、視覚や聴覚などの五感が徐々に鈍くなる傾向があるため、以前ほどストレスを感じにくくなる場合もあります。その一方で、ストレスや疲れが体調変化として現れやすくなる傾向も見られます。

ストレスとはイライラすることだけでなく、不安や恐怖を感じること、緊張することなども含まれます。

初めての場所への長時間のお出かけや、急激な環境変化などで精神的なストレスを与えてしまう可能性も高く、老犬を取り巻く環境や生活スタイルには注意が必要です。

身体的・精神的な負担は、できるだけ避けましょう。

体温調節が難しい

老犬になると、若い頃と比較して、体温を調節することが難しくなる傾向があります。

暑い時期に上がりすぎた体温を放熱したり、逆に寒い時期には体温を上げることで、大きく体力を消耗させてしまう危険性があります。

そのため、体力を消耗せずに快適に過ごせる気温の幅は狭くなる可能性が高いです。

例年と同じではなく、毎年愛犬が過ごしている気温が快適かどうか、体温調節の負担になっていないかなどをその都度確認することが、下痢の予防にもつながります。

感染症や内臓疾患

老犬になると、免疫力の低下や体力の消耗がしやすくなる傾向があります。

若い頃は、細菌やウイルス、寄生虫に接触しても自身の免疫力が十分に機能することが多いですが、老犬になると、免疫力が低下し、感染が悪化する場合があるため注意が必要です。

予防接種や予防薬などによる予防はきちんと行いましょう。もし体調不良などで予防が十分に行えない場合は、感染源と接触する場所へのお出かけや、ほかの犬たちとの接触を控えるなどの対策をとりましょう。

老犬になると、様々な器官の機能低下により、持病とともに生きる必要があるケースも少なくありません。

下痢が起こりやすくなる内臓疾患もあるため、早期発見ができるよう、日常生活の中での観察が大切です。

老犬の下痢で動物病院に行くべき目安

老犬の場合、下痢をそのままにしておくと、脱水や栄養吸収不良の状態になり、命に関わるトラブルにつながる危険性が高いです。

早期に動物病院を受診する必要がありますが、どの程度の症状で受診すべきか、飼い主さん自身の中で目安を決めておく必要があります。

目安として以下のような変化が見られた場合を目安にすると良いでしょう。

下痢が止まらない・繰り返す

犬は食べ物の変化や疲れなどの身体への負担、精神的な負担などで下痢を起こしやすい動物です。

一度下痢が見られても、食欲や元気があり、すぐに便の硬さが元に戻るようであれば、体を休ませてあげたり食事を見直したりして様子を見るという方向性でも良いでしょう。

しかし、下痢が止まらず繰り返す場合、何らかの大きな原因が隠れている可能性や、そのままの状態でいると、栄養吸収不良になったり、脱水症状が進んだりする可能性が考えられます。

できるだけ早めに受診するよう心がけましょう。

嘔吐を伴う

嘔吐を伴うことで、より脱水が起こりやすくなり、老犬にとって脱水や電解質バランスの崩れが致命的になる場合があります。

また、常備薬として下痢止めなどを所持していても、嘔吐を伴う場合、薬がしっかり吸収できず、薬効が期待できない可能性が高いです。

その場合、注射での薬の投与などが必要な可能性もあります。

命に関わる原因が隠れている可能性もあり、検査による原因の追求が必要です。

できるだけ早めに受診しましょう。

ぐったりして元気がない

老犬がぐったりして元気がない状態の場合、命に関わる危険性があり、最も緊急性のある状態です。

下痢による脱水や、栄養吸収不良による体力消耗、電解質バランスの崩れなどにより、元気がなくなっている可能性が高いです。

すぐに血液検査などで全身状態を把握し、点滴や注射による投薬などの適切な処置をすることが必要です。

かかりつけの動物病院、または休診日などであれば診療している近くの動物病院にすぐに受診してください。

受診前にぐったりして元気がないことや、下痢の程度、食欲の有無などをまとめておくと問診時にスムーズに伝えられます。

食欲がない

食事によって栄養素を摂取し、体力をつけ、体内の器官を動かすことができます。

そのため、食欲がなくなると栄養素が摂取できず、消耗が著しくなるでしょう。

特に老犬の場合、体力の著しい消耗は命に関わるトラブルにつながる危険性があります。

食欲がない原因は、全身状態の悪化によるものなのか、下痢の際の腹痛や違和感によるものなのかなど様々なことが考えられます。

すぐに原因を追求し、処置が必要です。早めの受診を検討しましょう。

血が混じっている

下痢でなくても、血混じりの便や軟便が見られる場合があります。

老犬にとって一度下痢が悪化してしまうと、回復しづらい傾向があるため早期に発見することがとても大切です。

血混じりの便や軟便は下痢につながりやすいため、気づいた段階で食事や環境の改善や受診を検討できると安心です。

血混じりの便や軟便で命に関わる危険性は低いとされています。投薬などがなくても愛犬自身の治癒能力で状態が改善する可能性は高いですが、引き続き注意して観察しましょう。

下痢で血混じりの場合、腸の炎症の程度がひどい可能性が高いです。

すぐに受診するよう心がけましょう。

老犬の下痢、自宅でできるケアと食事のポイント

老犬になると、消化機能の低下が起こるため、下痢などのトラブルに直面する頻度が若い頃よりも増します。

その都度慌ててしまわぬよう、自宅でできるケアや対策などを把握しておくと安心です。

一番安心なのは受診することですが、併せて自宅でも以下の点に気を付けられるとより良いでしょう。

食事は一度ストップして腸を休ませる

消化機能の低下している老犬の下痢の場合、腸への負担をしっかり軽減してあげることも大切です。

ドライフードであればふやかすことや缶詰のご飯への切り替えなどを検討し、少量を与えるようにしてあげてください。

下痢のひどい時期のみ、かかりつけの動物病院で消化器用の療法食を処方してもらうことも、症状の改善を速める選択肢の一つです。

水分補給をしっかり行う

下痢になると水分をどんどん輩出してしまう傾向があるため、脱水症状になりやすくなります。

老犬の場合、脱水症状になることで、意識がもうろうとしたり、倦怠感を感じたりするなどの異常から始まり、程度が悪化すると命に関わる危険性があるため注意が必要です。

下痢になると、便を少しでも固めようと水分を制限してしまう場合があります。しかし、水分の制限はこの場合逆効果となり、脱水症状をより悪化させる危険性があります。

しっかりと水分補給を行いましょう。

嘔吐を伴う場合は、脱水症状がさらに深刻になる危険性があります必ず動物病院を受診し、脱水症状の有無を確認した上で、点滴などの適切な処置をしてもらいましょう。

消化に良い食事を与える

老犬の下痢は消化機能の低下によって起こります。

より消化器に負担をかけにくい食事を選択することがとても大切です。

アレルギーがある場合であれば、アレルゲンの含まれない食事を選びましょう。

また、消化に良いごはんであれば、食物繊維が多く含まれ、低脂質のものであれば消化器に負担がかかりにくく、下痢につながりにくいとされています。

かかりつけの動物病院を定期的に受診し、愛犬の体質に合ったドッグフードについてアドバイスをもらえるとより安心です。

療法食として消化機能の低下している子に負担をかけにくいドッグフードもあります。

年齢や全身状態に応じて、適切な食事を選択しましょう。

腸内環境を整えるサプリメント

しっかりと栄養を吸収し、老廃物として便を排泄するために腸内環境が健康であることはとても大切です。

老犬になるに伴い、腸内環境も変化し、腸内の善玉菌と呼ばれる免疫力などに関連する菌が減少するなどの問題が見られる傾向があります。

少しでも腸内環境をサプリメントなどで健康的に維持することが、下痢などの消化器トラブルの対策につながります。

腸内環境を整えるサプリメントも様々なメーカーからいろいろな形で販売されています。

飲みやすい形状や価格などを比較して愛犬に適していそうなものを選択すると良いでしょう。

老犬の下痢に関するよくある質問

老犬の下痢は、なぜ注意が必要なのですか?

若い頃は、あまり消化器トラブルに直面しなかった犬でも、老犬になって消化機能が低下することで下痢などの消化器トラブルに直面する機会が増える傾向があります。

今まであまり目にしなかったトラブルに慌てる飼い主さんも多いでしょう。

たかが下痢と思いがちですが、下痢の程度や期間によっては命に関わるトラブルにつながる危険性があります。

食欲はあるのに下痢が続くのはなぜ?

加齢とともに免疫力や回復力も低下します。

特に老犬の場合、消化機能も低下しているため、消化器への負担も小さなことでかかりがちです。

若い頃と同じように食欲のままに食べてしまうことで、消化器への負担が軽減されずさらに下痢につながるという悪循環になってしまうことが下痢が続く原因です。

食事制限などで負担を軽減することも大切ですが、下痢が続くと体力の著しい消耗につながり、老犬にとって致命的になる危険性もあるため、投薬にて下痢を止める必要があります。

下痢が続く場合は動物病院の受診が必要です。

下痢が治らない場合はどうすればいい?

下痢が治らない場合、腸の炎症が落ち着いていないこと、腸の回復が不充分であること、腸への負担が軽減できていないことなどの原因が考えられます。

腸の炎症を抑えるために、免疫力や回復力の低下している老犬にとって、投薬は欠かせません。

また腸の回復の不十分さには全身状態の悪化などの原因が伴う場合もあります。

全身状態を少しでも改善するために、点滴などの処置が必要な場合もあります。

腸への負担の軽減も、獣医師の適切なアドバイスが必要な可能性も高いです。

治らない場合、背景のほかの疾患も関与している可能性もあるため、速やかな受診を検討しましょう。

人間用の薬を飲ませても大丈夫?

実際に動物病院では、処方薬として人間が使用する薬と同じものを処方する場合があります。

しかし、用量は動物に適したもので換算します。

人間用の市販されている薬の場合、合剤になっているものも多く、器官の機能が低下している老犬にとって負担になってしまう危険性もあります。

下痢になった場合、きちんと動物病院で処方してもらった犬用の薬を服用することをおすすめします。

万が一頻繁に下痢が起こり、毎回の受診が老犬のため負担になる場合などは、常備薬としての所持が可能かどうか、多めに処方することが可能かどうかなどを確認してみても良いでしょう。

まとめ

若い頃は下痢が命に関わるトラブルになりにくく、様子見をしがちだった家庭もあるでしょう。

しかし、老犬になると様子見から悪化してしまい、致命的なトラブルにつながる可能性が高まります。

下痢にならないような予防や対策を充分に行い、早期に変化に気付けるように注意して観察をしましょう。

下痢だけでなく、老犬になると様々なトラブルに直面する機会が増えます。

そんなときに頼れるかかりつけの獣医師がいると、飼い主さんが悩む場面で的確なアドバイスがもらえる可能性が高いでしょう。

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