「最近、寝てばかりでご飯をあまり食べてくれない…」
そんな愛犬の変化に、不安や心配を感じている方もいるかもしれません。
年齢を重ねた老犬にとって、食欲が落ちることは珍しくありませんが、ちょっとした工夫でまた食べてくれるようになることもあります。
この記事では、老犬がご飯を食べなくなる主な原因とともに、食べさせ方の工夫やおすすめのフード、手作りご飯のヒントをご紹介します。
愛犬が少しでもおいしく、ご飯の時間を楽しめるよう、この記事がヒントになれば幸いです。
老犬がご飯を食べなくなる原因は?
少し前まで元気に食べていたのに…シニア期に入った犬が急にご飯を食べなくなると、飼い主さんにとってはとても心配になりますよね。
ここでは、老犬が食べなくなる主な原因を解説します。
食欲不振を引き起こす病気の可能性
高齢になるほど、腎臓や心臓など重要な臓器の機能が低下しやすくなり、慢性的な病気が起こりやすくなります。
特に多いのが慢性腎臓病や心疾患です。これらは初期では目立った症状が出にくい一方、徐々に体重が減ったり、食べる量が減ったりする変化が見られます。
また、内分泌の異常(甲状腺機能低下症やクッシング症候群)なども、元気や食欲の低下の原因になることも。
嘔吐や下痢がある場合、あるいは急激な体調の変化が見られる場合には、早めに病院へ行くようにしましょう。
歯や口内のトラブル
老犬になると、歯周病や歯のぐらつき、歯ぐきの腫れといった口腔内のトラブルが増えてきます。
これらがあると、歯が抜けたり、痛みが出たりするため、ご飯を食べづらくなることがあります。
さらに、あごの筋力が低下してうまく噛めなくなったり、唾液の量が減って飲み込みにくくなることも。
特にドライフードは硬いため、ふやかすなどの工夫が必要になることもあります。
食事の好みや環境の変化
「今まで喜んで食べていたフードを、ある日突然口にしなくなる」これは老犬にはよくあることです。
もしこれまで好んで食べていたのに、急に食べなくなってしまったのであれば、食事の好みが変わったのかもしれません。
特に嗅覚や味覚が鈍くなることで、「今まで好きだったご飯が、あまりおいしく感じられなくなった」というケースも少なくありません。
また、気温や気圧など、環境のちょっとした変化も、高齢の犬にとっては大きな負担になります。
たとえば、梅雨や台風の時期には気圧の影響で体調を崩し、一時的におなかの具合が悪くなることもあります。
認知機能の低下
シニア期になると、犬も認知機能の低下(いわゆる犬の認知症)が起こることがあります。食べ物が目の前にあっても認識できなかったり、食べたことを忘れてしまったりと、食行動に影響が出ることもあるんです。
また、昼夜逆転や落ち着きのなさ、徘徊などが見られるようになると、食事の時間もバラバラになり、生活リズムが崩れて食べなくなることもあります。
嗅覚や味覚の衰え
老犬がご飯を食べなくなる原因のひとつに、「嗅覚や味覚の衰え」があります。
犬はもともと視覚よりも嗅覚に頼って食べ物を判断する動物で、人間の約1億倍ともいわれる嗅覚を持ちます。
ですが、加齢とともにこの嗅覚も少しずつ衰えていき、においを感じにくくなると「ご飯だ」と認識できなくなることがあります。
また、犬の舌には約1,700個の味蕾があるとされ、人間の約4分の1程度。
特に甘味には比較的敏感ですが、加齢によって味の感覚も鈍り、以前は好んでいたフードでも反応が悪くなることがあるんです。
こうした嗅覚や味覚の変化により、食べたい気持ちがあっても「ご飯と気づけない」「美味しく感じない」といった状態になっている可能性が考えられます。
老犬がご飯を食べない時の対処法と食べさせ方
食べなくなってしまった老犬でも、実はちょっとした工夫で「また食べてくれる」ようになることも多いのです。
ここでは、老犬が無理なくご飯を食べられるようになるための対処法と、具体的な食べさせ方のコツをご紹介します。
食事の与え方を工夫する
老犬は、食器や与え方を変えるだけで食べてくれることも珍しくありません。
たとえば、深い器が苦手な子もいれば、浅くて平たい皿の方が食べやすいという子もいます。
器の素材や形、大きさにこだわりが出ることもあるため、いくつか試してみましょう。
また、一度に入れる量が多すぎると食べたがらない犬もいます。
少量ずつ盛りつけるなど、見た目にも配慮してみてください。
それでもうまく食べられないときは、食事の補助も効果的です。
- スプーンや手で口元に運ぶ
- ペースト状のご飯を指で上あごに塗る
- シリンジ(針なし注射器)で少しずつ口に入れる
※シリンジを使う場合は、誤嚥しないように口の横からゆっくり入れることが大切です。
食事の温度や香りを変えてみる
老犬の食欲が落ちているときは、食事の温度と香りを見直してみましょう。
人肌程度に温めたフードは香りが立ち、嗅覚や味覚が衰えた愛犬にも刺激になります。
電子レンジや湯煎で軽く温めるだけでも、食べるきっかけになることがあります。
また、軽くフライパンで炒って香ばしさを加えるのも効果的です。
表面がカリッとすることで、食感の変化を楽しめるようになります。
ただし、温めすぎは火傷の原因になるため、指で触って「ぬるい」と感じる温度まで冷ましてから与えましょう。
いつものフードにトッピングを追加する
老犬がご飯を食べないときは、香りのあるトッピングを少し加えてみましょう。
嗅覚が衰えると、フードのにおいだけでは食べ物だと気づきにくくなるため、においの強い食材を添えることで食欲を刺激できます。
おすすめは、犬用チーズ・かつおぶし・ジャーキー・鶏ささみのほぐし身など。
サツマイモやカボチャ、バナナといった甘い香りの食材も好んで食べる犬も多いです。
最近だとトッピング用フレッシュフードも登場しています。
ただし、トッピングの入れすぎには注意。フードの量をあらかじめ少なめにし、全体のカロリーが過剰にならないよう調整しましょう。
香りで「食べたい気持ち」を引き出すことが、老犬の食事ではとても大切です。
手作りご飯を試す
老犬がご飯を食べないときは、水分の多い“手作りご飯”を試してみるのもひとつの方法です。
柔らかく香りの立つ食事は、噛む力や飲み込む力が落ちた老犬にとっても食べやすくなります。
おすすめは、鶏ささみや白身魚、かぼちゃ、さつまいもなどを煮てピューレ状やおかゆ状にしたもの。
温かくして出すと香りが広がり、嗅覚も刺激されます。
ただし、手作り食は栄養バランスの調整が難しいため、以下のような栄養素を意識して取り入れましょう。
- 良質なたんぱく質:鶏むね肉、ささみ、白身魚など
- 抗酸化成分:かぼちゃ、にんじん、ブロッコリー
- オメガ3脂肪酸:いわし、さけ、魚油
- 食物繊維・発酵食品:ヨーグルト、納豆、さつまいも
無理なく食べられる工夫を、少しずつ取り入れてみてください。
食器の高さを調節する
老犬は、筋力や関節の衰えから「首を下げて食べる姿勢」がつらくなることがあります。
その結果、「食べたくても食べられない」状態になっているケースも少なくありません。
まずは 食器の高さ を見直してみましょう。
- 目安は胸の高さ:首が少し下がるくらいの自然な姿勢で食べられる位置が理想
- 伏せ姿勢の場合:口元にフードボウルを近づけ、首が下がりすぎないよう調整
- 寝たきりの場合:上体を起こして顔が水平になるよう支える
ほんの少しの工夫で、老犬の食欲が戻ることもありますので、ぜひ見直してみてください。
老犬におすすめのご飯の選び方
ここでは、老犬の体に無理なく寄り添いながら、「食べやすさ」と「栄養」を両立できるフードの選び方についてご紹介します。
消化しやすいものを選ぶ
若いころに比べて、噛む力や内臓の働きが衰えてくる老犬には、食べやすくて消化しやすい食事が大切です。
噛みにくい・消化しづらい食材は、体に負担をかけてしまうこともあります。
- ドライフードはふやかして柔らかく
- 野菜や肉は細かく刻んで噛みやすく
- 消化に良い鶏肉やキャベツ、リンゴ(皮・種はNG)などを適量に
フードのかたさや大きさを少し変えるだけでも、体への負担は軽くなります。
愛犬の様子を見ながら、無理なく食べられる工夫をしてあげましょう。
低カロリー・高タンパクなものを選ぶ
老犬には、控えめなカロリーと適度なタンパク質がバランスよく含まれたフードが理想的です。
運動量は減っても、筋肉を維持するには良質なタンパク質(25〜27%前後)が欠かせません。
また、脂肪分が多いと消化に負担がかかるため、ササミ・白身魚・鶏むね肉など、脂質の少ない食材が使われているものを選ぶと安心です。
どちらも「良質なものを適量」が基本。
パッケージや公式サイトで原材料や製造方法を確認し、信頼できるフードを選びましょう。
関節ケア成分が含まれているものを選ぶ
年齢とともに足腰が弱くなり、関節に不調を感じる犬は少なくありません。
特にシニア期は、散歩中に座り込んだり、立ち上がるのがつらそうになるなど、変化が目に見えてくる時期です。
そんな老犬には、グルコサミン・コンドロイチン・コラーゲン・オメガ3脂肪酸などの関節ケア成分が含まれたドッグフードがおすすめ。
軟骨の保護や炎症の抑制をサポートし、日常の動きを支えてくれます。
これらの成分は、大型犬や太り気味の犬、よく動く犬にも有効。日々の負担軽減を考えるなら、食事から取り入れてみましょう。
サプリでの補給も可能ですが、持病がある場合や初めて使うときは獣医師に相談を。
また、関節の健康維持には体重管理も重要。関節サポート設計やカロリーに配慮されたフードを選ぶのがポイントです。
以下に、老犬の関節ケアにおすすめのドッグフードを紹介します。
商品名 | 特徴 | 対象 |
ロイヤルカナン BHN ダックスフンド(成犬用) | ダックス特有の関節負担に配慮、カロリー調整あり | 成犬(ダックスフンド) |
ニュートロ シュプレモ シニア犬用 小粒 | シニア犬に適した栄養設計。ふやけやすい小粒 | 超小型犬~小型犬のシニア犬 |
アーテミス アガリクス イミューンサポート I/S(小粒) | アガリクス配合で免疫力・自己治癒力に配慮 | 全年齢対象(免疫力強化) |
フィッシュ4ドッグ サーモン 小粒 | 抗酸化成分アスタキサンチン配合、シニア犬対応 | 成犬~シニア犬 |
ブリスミックス ラム 小粒(犬用) | 口腔環境ケアのK12配合。栄養豊富なプレミアムフード | 全年齢対象(ヘルスケア重視) |
参考:https://www.min-petkenko.com/foodChoice.php?mode=trouble&pet_type=dog&key_sc_item_id=joint_care
水分量の多いものを選ぶ
老犬は口の乾燥や噛む力の低下で、ドライフードを食べにくくなることがあります。
そんなときはセミモイストやウェットフードに変えるだけでも、食いつきが良くなることがあります。
香りが立ちやすく喉ごしもやわらかいため、飲み込みやすく、食欲をサポートしてくれます。
ドライフードはぬるま湯やスープでふやかすのもおすすめです。
粒の大きさや硬さに注目する
噛む力や内臓の機能が低下しやすいシニア期には、小粒や超小粒タイプのドッグフードがおすすめです。
大粒だと噛みにくく、食べ残しの原因になります。
特に老犬は歯周病などで口内にトラブルがある場合も少なくありません。
硬すぎないフードや、割れやすいドーナツ型の粒などを選ぶと食べやすさがアップします。
「食べない」のではなく、「噛めない」ことが原因のケースもあるため、粒のサイズや形状、硬さにも目を向けてみましょう。
老犬のご飯に関するよくある質問
愛犬が老犬になり、もしも食べなくなってしまったら戸惑ってしまうことも多いでしょう。
ここでは、老犬のご飯に関するよくある質問にお答えします。
手作りご飯の注意点は?
今までドライフードを食べていた愛犬に手作りご飯を与えるときは、急な切り替えに注意が必要です。食べ慣れないものを一気に与えると、消化が追いつかず下痢などの体調不良につながることがあります。少しずつ混ぜて慣れさせましょう。
また、ネギ類・レーズン・ブドウ・アボカド・マカデミアナッツ・カカオ類など、犬にとって有害な食材は絶対に避けてください。
高齢の犬は、その日の体調や気分で食べるものが変わることもあります。一度にたくさん作るよりも、少量ずつ複数用意しておくと安心です。急にたくさん食べると吐いてしまうこともあるため、無理せず少しずつ与えるようにしましょう。
食べない日が続いたらどうすればいい?
元気があるなら、無理に食べさせずに、ドライフードはお湯でふやかす・香りを立たせるなどの工夫で食いつきが良くなることもあります。
加齢で歯や嗅覚が衰えた結果、固いフードを嫌がるケースもあるため、柔らかくて香りのある食事への切り替えも有効です。
また、フードが古くなって匂いが変わっていると食べないこともあります。賞味期限や保管状態も確認してみてください。
もし1日間まったく食べない場合は、すぐに病院へ行きましょう。
ドライフードをふやかす時のポイントは?
基本のふやかし方は、ドッグフードに30〜40℃のぬるま湯を注ぎ、5〜15分程度置くだけ。噛む力が弱った老犬には、指で潰せるくらい柔らかくなるまでふやかすのが理想的です。
時間がないときは、以下の時短法も便利です。
- 電子レンジ加熱(500Wで20秒)→冷ます
- ミキサーで細かく砕いてからお湯を注ぐ
【注意点】
- 熱湯はNG(栄養素が壊れるおそれあり)
- 冷ましてから与える(火傷防止)
- ミネラルウォーター・牛乳は使わない
- ふやかした分はすぐに与える(傷みやすいため)
1日の食事回数のおすすめは?
老犬は1日3〜5回に小分けして与えるのが理想的です。
シニア期(7歳〜10歳頃)は、消化機能の低下に合わせて1日3〜4回程度に。
後期高齢期(11歳〜)には、嗅覚や噛む力の衰えも加わるため、4〜5回に分けて少しずつ与えると負担が少なく、食べやすくなります。
一度にたくさん食べさせるのではなく、体調や生活リズムに合わせて無理のない頻度で調整してあげましょう。
まとめ
年を重ねた愛犬がご飯を食べなくなるのは、決してめずらしいことではありません。噛む力が弱くなったり、匂いを感じにくくなったり、体のあちこちに小さな変化が出てきます。
老犬がご飯を食べない場合、何よりも食べることが大事です。
大切なのは、「どうしたら食べやすくなるかな?」という視点で寄り添ってあげること。
今回ご紹介した工夫を、あらためてまとめてみました。
・1回に食べる量を減らして、1日3〜5回に分けてみる
・ふやかしたり温めたりして、香りを引き出す
・食器の高さや食べる姿勢を工夫してあげる
・ちょっとしたトッピングで「食べたい気持ち」を引き出す
どれも難しいことではありませんが、老犬にとってはうれしいサポートになります。
その子に合ったやり方を見つけながら、楽しく食事ができる時間を一緒につくっていきましょう。
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