老犬の寝たきり介護は、うんちのお世話や楽な姿勢に都度変えてあげるなど、愛犬が身体に負担を感じることなく過ごせるように行う必要があります。
何もわからず、ただサポートをしようとすると、愛犬の要求や快適に過ごすためにできることが見つけられずに途方に暮れてしまう場合もあるでしょう。
この記事では、愛犬と飼い主さんが後悔のないよう過ごすために、ご家庭でできることや注意すべき点についてご紹介します。
老犬が寝たきりになる原因と余命について
かわいくていつまでも赤ちゃんのような愛犬も、いつかは老犬になり、寝たきりになる時期を迎えます。その姿にショックを受ける飼い主さんも少なくないでしょう。
しかし、後悔のないシニア期間を過ごすために、余命や最期のことを覚悟しなければなりません。
老犬になり寝たきりになった場合、愛犬の身体にはどんなことが起こっているのでしょうか。
寝たきりになる原因
寝たきりといっても状態は様々です。
- 意識ははっきりとしていてごはんや排泄はある程度できるものの、うまく歩いて自分の行きたいところへいけない場合
- 意識ははっきりしているものの、ごはんや排泄、移動などがうまくできない場合
- 意識ももうろうとしている場合
また、状態によって寝たきりになっている原因も様々です。
移動することのみができない状態なのであれば、関節の違和感や筋力の低下、体力の消耗などが原因となり得ることが多いです。
ごはんや排泄なども難しい場合、体内の消化器の機能や嚥下能力の低下、筋力の低下や消化吸収不全により体力の消耗なども併せて起こっている可能性が考えられます。
意識の朦朧まで起こっている場合、循環器や呼吸器の機能低下など命に直結する器官の機能低下や脱水などによる電解質バランスの破綻などが起こっている可能性が高いです。
意識の朦朧などが見られる場合、余命が短い可能性もあります。
余命はどのくらい?寝たきりの愛犬と過ごせる目安
老犬が寝たきりになった場合、介護の覚悟をすると同時に、残された最期の時間を、後悔のないように一緒に過ごすことが大切です。
うんちや楽な姿勢への体位変換などの機械的な介護になりがちですが、残された時間を意識しながら過ごしてあげることが理想的です。
運動ができないのであれば、しっかりうんちや楽な姿勢をとらせてあげることで余命を伸ばしてあげることができるかもしれません。
ごはんや排泄などもできない場合、しっかりうんちのお手伝いやご飯のお手伝いをさせてあげることで余命を伸ばしてあげられる可能性がありますが、残された体力によって、どの程度の期間、愛犬と一緒に過ごせるかは変わります。
寝たきりになってすぐに危険な状態に陥る可能性は低いですが、意識がもうろうとしている場合は、余命が近い可能性が高いです。
後悔を減らせるよう、してあげたいことをしてあげましょう。
老犬の寝たきり介護|やることリスト
食事の工夫:食べさせ方とフード選びのポイント
老犬になるとかみ砕く力や飲み込む力が弱くなります。若いころと同じフードを与えようとしても、うまくかみ砕けなかったり、消化器に負担をかけてしまうなどのトラブルにつながる危険性があります。
寝たきりや排泄のサポートが必要な期間になったら、かみ砕く力や飲み込む力を把握し、あまり消耗をしない形状のものを選んであげましょう。
ウェットフードはおすすめですが、ドライフードと比較すると必要なエネルギーを満たすために、量が多く必要な場合もあります。高栄養なものを選ぶことも、少量で効率よく摂取できるポイントです。
与え方によっては誤嚥をしてしまう危険性もあるため、のどの奥に入れず上あごに押し当てるように少量ずつ与えるように注意してあげてください。
シリンジのような介護グッズも活用しながら、食事の補助をしてあげましょう。
うんちのケア:オムツや清潔の保ち方
排泄のコントロールが苦手になることも老犬の特徴です。寝たきりになった場合、特にうんちのケアは工夫が必要です。
自分で排泄できる場合は問題ありませんが、排泄に介助が必要となる場合は定期的に押し出してあげるなどの介護が必要になることもあります。
実際の方法は、かかりつけの獣医さんなどに相談しながら決めましょう。
オムツの交換などもこまめに行うことで、細菌の繁殖による皮膚トラブルなどを避けることが可能ですので、こまめな交換と、洗浄液や専用のシャンプータオルなどでのふき取りや洗浄を定期的に行うことをおすすめします。
身体の清潔を保つ:拭き方や部分洗いの方法
オムツの交換とも関連しますが、老犬の身体を清潔に保つために、定期的なふき取りや部分洗いが大切です。
ぬるま湯などでのふき取りでも汚れは除去できますが、より清潔に保つために、できれば洗浄液やふき取り用のシャンプータオルを利用することをおすすめします。
全身をシャンプーすることは寝たきりの老犬にとって、大きな体力の消耗につながり、そのあとのトラブルにつながる危険性があります。汚れたと感じた場合や定期的に、ふき取りや部分洗いをしてあげましょう。
床ずれの予防と対策:体位変換と寝具の選び方
寝たきりの老犬の場合、特に注意しなければならないのが、床ずれです。
同じ姿勢のままでいると、老犬の身体は脂肪や筋肉などの量の変化により、関節などが床などと接する部分が床ずれになりやすい可能性が高まります。
寝具を床ずれになりにくい低反発などの素材にすることや、こまめに体位変換をするなどの対策が有効とされています。体位変換の際には、床ずれになりにくいよう反対向きにすることも大切ですが、楽な姿勢を探して取らせてあげることも大切です。
床ずれになりにくい介護用マットも販売されているので、おすすめです。
快適な環境作り:温度・湿度・音への配慮
老犬になると、視覚や聴覚、嗅覚などの五感も衰えます。
そのため、急な大きい音や、刺激に対してびっくりしてしまう可能性があります。近づいたり、楽な姿勢に変えてあげるときは必ず優しく声をかけてびっくりさせないよう心がけましょう。
寝たきりになると、自分自身で快適な場所への移動が難しくなるため、温度や湿度など愛犬に合わせて快適な環境を作ってあげる必要があります。
持病や全身の状態によって適した環境は異なり、老犬になると体温調節も難しくなる場合もあるため、快適さだけでなく健康にいられる環境を作れるよう配慮してあげましょう。
老犬が寝たきりでも楽な姿勢と体位変換のコツ
なぜ体位変換が必要なのか
寝たきりになった老犬は、自分自身で楽な姿勢に体位を変えたり、痛みや違和感を感じた際に体位を変えることができません。
特に、筋力の低下した大型の老犬は自分自身の体重を支えることも難しくなる場合があります。寝たきりになった際に、負担にならないよう体位変換をしてあげる必要があります。
寝たきりの愛犬にとって楽な姿勢
まず、老犬になると持病として心疾患や呼吸器疾患などのトラブルに向き合わなければならない場合があります。その際に、うつ伏せの姿勢や胸を圧迫する姿勢は呼吸をしづらくさせるため、苦しく感じてしまうかもしれません。
できれば、横向きや胸の部分を浮かせられるように何かを挟むなどの工夫をしてあげてください。
また、老犬になると腫瘍や床ずれの傷ができる場合があり、患部を下にしようとすると痛みや違和感を感じてしまう危険性があります。
腫瘍や傷が触れないよう、反対側を下にしたり、直接触れないよう台やタオルなどで高さを作ってあげる等の工夫をすることをおすすめします。
正しい体位変換のやり方
老犬が寝たきりになると筋力の低下も進み、飼い主さんの力のみで体位変換を行わなければならない場合もあります。
特に大型の老犬などは飼い主さん一人での体位変換は難しいでしょう。
無理をして一人で体位変換を行おうとすると、老犬の身体を痛めてしまうかもしれません。バスタオルなどを担架代わりにしたり、家族で協力して行うことをおすすめします。
寝たきりになった場合、必ず定期的な体位変換は必要になります。家族のスケジュールを確認して計画的に行うなど対策をとりましょう。
寝たきりの老犬に刺激を与えよう
寝たきりの老犬に起こりがちなトラブルの一つに認知症も挙げられます。
介護はうんちのお世話や体位変換など物理的なものにスポットがあてられがちですが、寝たきりの老犬とスキンシップをとりながら行うことで、脳へも刺激をあてることもとても大切です。
寝たきりになると余命も短くなり、後悔を減らすための介護が必要となります。たくさんの刺激となり得る声かけや思い出作りが大切です。
声かけや触れ合い
老犬となった愛犬と、今まで築き上げてきた信頼関係があるでしょう。ぜひたくさん声かけやふれあいをしてあげてください。
寝たきりになったからと言って、そのまま寝かせておけば良いわけではありません。できるだけ声をかけ、愛情を伝えてあげることをおすすめします。
寝たきりでぼーっとしていても、触れられていることも声をかけられていることもわかることが多いです。
最期を迎える際に、もっとふれあってあげればよかったという後悔が残らないよう、たくさん声かけやふれあいをしてあげると良いでしょう。
ペットカートでの短い散歩や日光浴
寝たきりになったら散歩や外への外出ができなくなる分、与えられる刺激も限られてしまいます。
そんなときに、ペットカートを使用して短い散歩をしてみたり、ベランダなどで日光浴をしてみることも、外からの様々な音やにおい、空気の変化などが老犬にとって刺激となるでしょう。
しかし、寒い時期や暑い時期は老犬の体に大きな負担を与えかねないため、時間帯や季節に注意した上で、愛犬の体調も見ながら適切に散歩を行いましょう。
訪問診療や往診の活用:自宅で受けられる医療サポート
老犬になると状態の良いときと体調不良になるときが交互に起こり、波があるため安定する時期も短くなりがちです。
寝たきりで体調が悪くなった場合、車での移動ができず連れていくことが難しいことや、愛犬の体調を考慮してあきらめねばならないと感じてしまうこともあるかもしれません。
そんなときに近くで往診が可能な動物病院があるのであれば、相談することで解決につながる可能性があります。
往診でできる治療は限られてしまいますが、老犬が感じている違和感や負担を軽減してあげられる可能性があるでしょう。
老犬が寝たきりでこんな症状が見られたら病院へ
老犬が寝たきりになっている場合、以下のような症状が見られたら、致命的なトラブルに直結しやすいです。すぐに受診をしましょう。
食欲不振や嘔吐、下痢が続く
寝たきりになった老犬にとって、身体の機能が低下しているケースが多いです。
消化機能や腸運動も若いころと異なり、良い状態の時と不調の時との波が生じるようになることもあります。
一度の嘔吐、下痢や食欲不振による栄養吸収不良は老犬にとって大きなダメージとなり、余命を縮めてしまう危険性があるため、すぐに受診することが大切です。
寝たきりの期間は、動物病院を受診することも大変に感じるかもしれません。かかりつけの先生の往診が可能なのかなどをあらかじめ確認しておくと安心です。
呼吸が荒い、苦しそうにしている
老犬が呼吸が荒く苦しそうにしている場合、呼吸器や循環器の異常が起こり、息苦しさを感じている可能性が高いです。
状態によっては死に直結する場合もあります。
寝たきりの場合、呼吸が楽な姿勢に体位変換することが自身でできず、余計息苦しくなってしまうこともあるため、まずは楽な姿勢を見つけて体位変換してあげてください。
そしてすぐに受診をすることをおすすめします。
老犬が呼吸が荒い期間や苦しそうな期間が長引く場合、自宅での医療酸素のレンタルサービスなども利用すると良いでしょう。
ぐったりして意識がない
老犬のぐったりして意識がない状態、余命が短く、緊急性のある状態です。
寝たきりになった場合、いつかは迎える状態ともいえるでしょう。往診などの受診が可能であればすぐに受診を検討するべきです。
自宅で看取るという飼い主さんの方向性が決まっているのであれば、その旨もかかりつけ医に伝えたうえで、往診なのか動物病院へ連れていくべきなのかを相談することをおすすめします。
老犬がぐったりして意識がないということは、残された愛犬との時間がわずかである可能性が高いということでもあります。
後悔を減らせるよう、最期にしてあげたいこと、会わせたい人に声をかけ、伝えたいことを伝えるなどの準備も始める必要がある可能性が高いです。
まとめ
愛犬もいつかは老犬になり、寝たきりになった状態を介護しなければならなくなることもあるでしょう。
飼い主さんはその事実を知って落ち込んだり、日々の介護に精神的に追い詰められてしまうこともあるかもしれません。
もし、どうしてもつらい場合は専門家の助けを借りるなどして、負担を軽減したり、適切なアドバイスをもらいながら行うことをおすすめします。
寝たきりの老犬の介護の期間が辛いものではなく、愛犬に今までの感謝の気持ちを伝えながら、残された時間に最後の思い出を作れるような、そんな有意義な期間となりますよう願っています。
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