愛犬が「最近、年を取ってきたなぁ」と感じる瞬間が増えてきたら、これからの暮らし方を少しずつ考える時期かもしれません。
老犬ホームは、高齢の愛犬が安心して過ごせるよう、専門スタッフが日常のケアや介護を行う老犬のための介護施設です。
老犬にとっても飼い主さんにとっても、どちらの負担も減らしてくれるでしょう。
しかし、いざという時に焦って探すのではなく、愛犬がまだ元気なうちから頭の片隅にでも置いておくと安心です。
この記事では、老犬ホームの費用や選び方、注意点などを、わかりやすく解説します。
老犬ホームとは
老犬ホームとは、人間の老人ホームと同様に、年を重ねた愛犬が、穏やかに安心して暮らせるよう、必要なケアを提供しながら見守ってくれる施設です。
簡単にいえば、「犬のための介護付きホーム」とも言えるでしょう。
老犬ホームでは、高齢になった愛犬が安心して過ごせるよう、食事や排泄、散歩、シャンプーなど、日々のケアを飼い主さんに代わって専門家がお世話してくれます。
近年は犬の寿命も延びており、寝たきりになったり、夜泣きや徘徊といった認知症の症状が出てきたりすると、飼い主さんのサポートだけでは心身共に疲労し、家庭でのお世話を続けることが難しいと悩む方も少なくありません。
そういった場合、老犬ホームに預けることにより飼い主さんの負担を減らすことができます。
老犬ホームの費用と料金体系|安い老犬ホームはある?
老犬ホームの料金は、施設の場所やサービス内容、愛犬の状態によって大きく変わります。ここでは、初期費用から月額費用、医療費やオプション料金まで、気になるお金のことをわかりやすく解説します。
初期費用の相場
入所時に必要な初期費用(入居金)は、10万円〜50万円ほどが一般的です。
これは入会金や設備使用料などにあたるもので、施設によっては設定のない場合もあります。
ただし、多くの施設では返金不可となっており、たとえ数ヶ月で愛犬が亡くなってしまっても戻ってこないことがほとんどです。
そのため、初期費用の金額だけでなく、「返金規定」も事前に確認しておきましょう。
月額費用の相場(犬種・介護度で変わる)
老犬ホームの基本的な月額費用は5万円〜15万円程度です。
しかしながら、犬種の大きさや介護の必要度によって変動することもあります。
例えば中〜大型犬で、介護が必要な場合には月額10〜50万円になる場合が多いです。
この費用には、基本的なケアや食事、健康管理費用などが含まれています。
また、契約は1か月単位の短期から半年や1年などの長期プランまで幅広く、長期契約のほうが月あたりの金額が割安になる傾向があります。
ただし、長期契約でも途中退所時の返金がないケースが多いため、どのくらいの利用期間になるか読めない場合は慎重に検討しましょう。
追加オプションと医療費について
基本料金に含まれないオプションとしては、シャンプーやトリミング、ワクチン接種、フィラリア・ノミダニ予防などがあり、別途費用が発生する場合があります。
また、認知症のケアや寝たきり介護などが必要な場合には、「介護度」に応じた料金が追加でかかることもあります。
たとえば、中型犬で中等度の介護なら、追加の介護費用として月額5〜15万円程度がかかることも。
さらに、医療費として「預かり金」が設定されている施設も多く、相場は3万円〜17万円ほどです。
これは通院や突発的な治療に備えて預けるもので、使用しなかった分は退所時に返金されるのが一般的です。
しかし、初期費用には大きく関わる部分なので、しっかり確認しておきましょう。
デイケア・一時預かりの値段相場
長期の入所が難しい方には、日帰りの「デイケア」や、数日〜数週間の「ショートステイ」がおすすめです。
デイケアは1日3,000円〜5,000円程度、一時預かりでは1泊3,000円〜10,000円程度が相場です。
介護の程度やサービス内容によっては、それ以上になることもありますが、旅行や入院など一時的に愛犬を預けたいときには心強い選択肢となるでしょう。
格安老犬ホームの探し方と注意点
「できるだけ費用を抑えて、でも安心して預けたい」そんな飼い主さんの願いを叶えてくれる格安老犬ホームもあります。
ただし、安さだけを重視して選んでしまうと、あとから後悔したという声も少なくありません。
ここでは、費用の目安と、選ぶ際に気をつけたいポイントをご紹介します。
「格安」ってどこまで?
老犬ホームの中には、月額5万円前後で利用できる施設もあります。
中でも、地方の郊外に位置する施設は、人件費や土地代が抑えられる分、都心よりもリーズナブルな価格設定になっています。
たとえば、九州地方や関西の郊外などでは、初期費用が不要で月額5万〜10万円程度のプランを提供しているところが多い傾向にあります。
ただし、「安い=お得」とは限りません。
基本料金は安く見えても、介護費や医療費、送迎費などが別途かかるケースもあり、最終的には高額になることも。
料金表の“内訳”までしっかりチェックすることが大切です。
また、安い老犬ホームでは、どのようなサービスが行われているか保証されていないのも不安要素です。
大切な愛犬を長く預けることになるため、目先の料金だけでなくトータルで見極めるようにしましょう。
格安老犬ホームの注意点
料金が安いと魅力的に感じますが、値段だけで決めてしまうと「こんなはずじゃなかった…」と後悔することもあります。大切な愛犬を預ける場所だからこそ、しっかり見極めましょう。
【見学のときにチェックしたいポイント】
・スタッフの人数と、ケアがどこまで行き届いているか
・施設内の清潔さ、空気の流れやにおい
・犬たちが穏やかに過ごせているか
・万が一のときに医療対応できるかどうか
たとえば、格安の老犬ホームでは費用を抑えるためにスタッフの人数を減らしていることも多いです。
1人のスタッフが何頭もの犬を見ていたら、寝たきりの子へのサポートが追いつかないこともあります。
床がベタついていたり、空気がこもっていたりする施設は、日頃のケアも十分に行き届いていないことも考えられます。
愛犬がのんびり安心して暮らせるかどうか、自分の目と鼻と肌で感じることが大切です。
よくある老犬ホームを利用する理由
老犬ホームを考えるきっかけは、「愛犬が年を取ったから」だけではありません。
飼い主の体調や生活の変化、愛犬自身の介護の必要性など、理由は家庭によってさまざまです。
ここでは、老犬ホームの利用が検討されることの多い、代表的な3つのケースをご紹介します。
飼い主が介護や長期入院する必要がある
飼い主自身が病気やケガで入院する場合や、ご自身や家族の介護に専念しなければならないこともあるでしょう。
そんなとき、「一時的にでも預けたいけれど、安心して預けられる場所が見つからない」と悩む方は少なくありません。
老犬ホームの中には、短期の「ショートステイ」に対応していることも多く、必要な期間だけ預けることが可能です。
ペットホテルと違い、老犬ホームには介護に慣れたスタッフが常駐し、24時間体制で健康管理や見守りを行ってくれます。
ただ預かるだけでなく、愛犬の年齢や体調に合わせたケアをしてくれるため、頼れる存在となるはずです。
自宅での24時間の介護が難しい
老犬の介護は、想像以上に手がかかるものです。
寝たきりになれば食事や排泄の補助、認知症が進めば夜鳴きの対応も必要になります。
まるで、休みのない長距離マラソンのような日々に、飼い主さんの体力も気力もすり減ってしまいます。
家族に病人がいたり、仕事や子育てと両立している場合、すべてを1人で背負っていては、飼い主さんの身体ももたないかもしれません。
そんなとき、老犬ホームは愛犬と飼い主どちらにとっても“もうひとつの安心できる居場所”となります。
愛犬にとっての快適さと、飼い主さん自身の心身の余裕、その両方を守るための手段として、無理を感じたときは専門の手を借りることも考えてみてもよいでしょう。
夜泣きが止まらず、近隣に迷惑がかかってしまう
老犬になると、夜中に吠えたり徘徊したりする「夜鳴き」や「徘徊」の症状が出ることがあります。これが毎晩続けば、飼い主の睡眠は削られ、近隣との騒音トラブルにつながることも。実際、苦情が重なりやむなく手放す選択をしたという例もあるほどです。
「迷惑をかけてしまう」と自分を責める前に、専門的なケアが受けられる老犬ホームに預けるのも1つの方法です。
できることなら一緒にいたい気持ちもよく理解できます。
でも、老犬ホームのスタッフは、これまでに多くの老犬を見守ってきた「ベテラン介護士」のような存在。
認知症ケアに慣れているため、愛犬も無理なく過ごすことができ、飼い主さんも少し肩の力を抜いて見守れるようになります。
老犬ホームの選び方
老犬ホームは全国に300件以上あると言われており、選択肢が多い分「どこに預けたらいいのか」と迷ってしまう方も少なくありません。
だからこそ、大切な家族を託す前に、いくつかのポイントをしっかり確認しておくことが大切です。
立地
老犬ホームを選ぶうえで、「通いやすさ」はとても大切なポイントです。
面会は飼い主の安心のためだけでなく、愛犬にとっても心の支えになります。
たとえ環境に慣れない日が続いても、大好きな飼い主さんが会いに来てくれたら、緊張でこわばっていた心もふっとゆるむはず。
言葉にできなくても、「ちゃんと覚えててくれたんだ」と感じてくれるでしょう。
だからこそ、通うたびに負担がかかる遠方よりも、できるだけ無理なく足を運べる距離の老犬ホームを選ぶとよいでしょう。
面会ルールやプランをチェック
面会は、愛犬と心をつなぐ大切な時間です。
しかし、中には「週1回のみ」「完全予約制」といった制限がある施設もあります。
「忙しくても少しだけ顔を見せたい」と思うなら、柔軟に対応してくれる施設を選びましょう。
また、預け方のプランも確認しておきたいポイントです。
日帰りの「デイケア」、数日の「ショートステイ」、長期の「終身預かり」など、施設によって対応は多種多様です。
「家族の入院中だけ」「しばらくの間だけお願いしたい」など、利用するシーンに合うプランがあるかどうかも、事前にチェックしておくことをおすすめします。
あとから「別の老犬ホームだったら…」という後悔を減らせるでしょう。
設備や環境を確認
老犬にとっては、静かで落ち着ける場所がなにより大切です。
段差のない床や、冷暖房がしっかりきく部屋、まわりが静かな環境など、「安心して過ごせるつくり」になっているかを見ておきましょう。
たとえば、元気な犬が多くてにぎやかすぎると、落ち着けない子もいます。
愛犬の性格に合う、ちょうどいい環境かどうかを意識して選ぶのがポイントです。
口コミやSNSも参考にする
ホームページやパンフレットでは見えない“リアルな声”を知るには、口コミやSNSが役立ちます。
Googleマップの口コミや、X(旧Twitter)・Instagramなどで「老犬ホーム+地名」などで検索してみると、実際に利用した方の感想が見つかることも。
また、ブログやSNSで日々の様子を発信している施設は、飼い主さんとのつながりを大切にしている証拠でもあります。
たとえば「今日はこの子のトリミングをしました」「お昼寝中の一コマです」など、小さな発信からスタッフの人柄も伝わってきます。
【最重要】実際に見学しよう
ホームページやパンフレットだけでは、分からないことがたくさんあります。
写真ではキレイに見えても、現地に行ってみたら「思ったより狭い」「においが気になる」といったことも珍しくありません。
老犬ホームは、愛犬が毎日を過ごす場所です。
だからこそ、実際に自分の目で見て、耳で聞いて、空気を感じておくことがとても大切。
言わば、「これから愛犬が暮らす家を内見するようなもの」です。
見学の際は、犬たちの様子やスタッフの対応、においや空気の流れ、室内の明るさなど、細かいところまでチェックしましょう。
また、スタッフがどんな想いで犬に接しているのか、どんなケアをしているのかを直接聞ける貴重な機会でもあります。
その時になって焦って決めてしまわないためにも、「いざというとき頼れる場所」を事前に探しておけると安心です。
まとめ
老犬ホームを選ぶことは、決して愛犬を「手放す」ことではありません。
それは、大切な家族の一員である愛犬のために安心できる居場所を探してあげる、もうひとつのやさしさです。
どんな場所なら、この子が落ち着いて過ごせるだろう。
会いに行ったとき、安心した顔を見せてくれるだろうか。
そんなふうに思いながら選ぶことが、愛犬への何よりの思いやりになるはずです。
老犬になり介護が増えると、飼い主に余裕がなくなり、大好きな愛犬であっても負担に感じてしまうこともあるかもしれません。
そんなとき、老犬ホームを利用することで、飼い主の心にも、少し余裕ができることで、またやさしく向き合える時間が戻ってくるはずです。
「ずっと一緒」は形を変えて続けられます。
そんな選択肢として、老犬ホームを前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
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